旅することは、人間特有のプリミティブな行為です。

動物は命をつなぐために移動しますが、人間はまだ見ぬ世界に想いを馳せて移動＝旅をします。移動の困難を解決してきた知恵、目的地へたどり着く情報ネットワーク、新しい世界を求め続けるあくなき好奇心によって、人々は遥か昔から旅を続けてきました。

特に日本は島国のため、外国に行く手段が限られたり、国内の移動も豊かな緑に覆われた山地をいくつも超えて列島を縦断をする必要があります。

テクノロジーの進化により移動手段を増やし、移動時間を短縮し、快適性を磨き上げてきたにもかかわらず、私たちは手付かずの自然に触れに行ったりとあえて不便を選択するという矛盾した行動は、好奇心が引き起こす反応かもしれません。

日差しの下だけでなく屋内でも、布団を畳んだり家具を移動させ、狭いスペースで快適に暮らす術を獲得してきました。目的や気分によって、部屋から部屋へ、家の内から家の外へ、起点から離れた場所へ移動させ、さまざまなものを自由に行き来させることができます。

私たちは移動すること、旅することと親密な関係にあるのです。